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環境ストレスと適応について

[2018.05.11]

近年天候は今までになく不安定で寒暖の差も激しく、毎年のように異常気象の中に身を置くことが多くなっています。そして低気圧が来ると体の具合がおかしいと感じる方も多いと思います。進化の過程で海中から地上に上がった生物としての我が身は、いまや陸上の激しい環境の変化の中に身を置いていますが、最近はますますその度合いが厳しくなってきているようです。

環境の変化が少なく守られた海中から激しい変化に見舞われる地上での生活に適応するために生命が大きな進化を遂げたのは皆様がご存知の通りです。その過程の中で、生体内の環境を維持するために生体機能調節系が働いています。腎機能も大きな働きを担っています。我々の体の内部は(臓器にしろ細胞にしろ)、地上においても海の中の環境がそのまま保たれるように進化し、その中でさまざまな身体の生理的な機能が働いています。今回はこの生体機能調節系について整理してみたいと思います。

厳しい環境変化(気温、気圧、湿度、水環境、病原菌、ガスなど)から身体の機能が最適に機能するように内部環境を保つことをホメオスタシス(恒常性)といいますが、そのホメオスタシスを維持する上で、自律神経系、内分泌系、免疫系(この三者が主役)がそれぞれ密に連携して機能しています。
ここではそれぞれキーワードを上げるに留めておきますが、自律神経系では、抵抗力を高め身体機能を発揮するためのアクセルとしての交感神経と、身体を休めエネルギーを蓄積するときに機能する副交感神経が拮抗的に働いてきます。危機に直面したときに瞬時に体を動かすときにはもちろん交感神経の機能が高まります。

内分泌系の臓器としてよく知られているのは、甲状腺、副腎などです。甲状腺は体を維持していくための熱の産生や新陳代謝などに関係しています。甲状腺機能が低下していると心身の機能が低下し、うつ状態と区別が困難となるため、うつ病の鑑別として甲状腺機能を調べることが必要となっています。副腎はストレスに対抗するためのホルモン、コルチゾールというステロイドホルモンを産生しています。このあたりの話は改めて別の機会に話を広げてみたいと思いますが、我々はストレスがかかると前述の交感神経に加えて、副腎からコルチゾールが産出され体の機能を高めストレスに対抗しようとします。そしてストレスに対抗しそれを乗り切っていくことになります。もちろん我々の体は有限なので、慢性的に高負荷のストレスに晒され続けると限界を迎え、こうした機能がはたらかなくなり、外部からのストレスに対して、身体がダイレクトに影響を受けるようになります。それは頭痛、めまいなどの身体症状や倦怠感、だるさ、気力低下、抑うつ気分などとして現れます。
そしてそれは体を蝕む細菌やウイルス、そして自分の体から間違って生まれてくるがん細胞を撃退する免疫系にも影響し、抵抗力は低下します。

我々の身体は陸上における厳しい環境変化の中、身体を維持していくためにこのような精緻な生体機能調整系を進化させてきました。こうした外部環境のストレスは天候によるものだけではなく、現代社会では仕事上のこと、対人関係上のこと、経済的なことなど、さまざまなストレスが存在しています。陸上の生活に適応するために進化してきた生体機能調節系は、環境への適応に加えて、現代特有のストレスに対しても、その働きを駆使して困難を乗り越えるべく適応しようとします。うつ状態にある方には、無理を重ねた結果、この生体機能調節系が破綻するか働かなくなっていると思われる方も多くおられます。こうした方の生体機能調節系を中心とした心身の回復には、年単位の期間がかかることも少なくありません。多少の無理がかかるのはやむを得ないとしても身体の限界を超えてうつ状態になる程自分を追い詰めることは、自身の生体機能調節系を酷使した結果、機能不全に陥れ、本来の自分の能力が果たせなくなる状態を引き起こしてしまいます。そうなった場合は回復に長い時間を要することになります。

低気圧に晒された時に、身体の倦怠感、だるさや頭痛などの身体症状や意欲低下、倦怠感、易疲労感が現れた場合は、心身に余力がなくなっている可能性が高いと思われます。その場合は十分な休養とリラクセーションが必要です。こうした状況から仕事や生活に支障が出るようでしたら、近くの医療機関にご相談することをお勧めします。普段から身体をモニターし、きちんと休養すべきときに休養し、活動との間でメリハリをつけて行きたいものです。

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