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発達の特性を持つ児童について(1)

[2019.05.03]

 今大人となっている方は、子ども時代の事を折に触れて思い出すことも多いと思います。心の中に困った子ども部分が残存していることを感じる方もいるでしょう。成長する過程の中で、子どもの時に体験したいくつかの体験は各自の心の中に折り畳まれるように、色あせることなく積み重なっていることでしょう。家庭の中で、社会の中で、個人の中で、何かうまく行かないことが起きた時に、自分の子ども時代に体験した時の残像とでもいうものが、背後で自分を操っていることがあるかもしれません。私自身の例を挙げると、小学生の時でしたか、嫌だと感じていたにも関わらず、親が望むので仕方なく、地域宗教の集まりに参加しましたが、どうしても意味がわからず、ついに我慢できなくなって、“嫌だ”という自分の思いを受け止めて欲しくて、理不尽と感じながらもそのことを伏せたまま目の前の些細なことに難癖をつけ、無理難題を親に泣いて迫ったことなどが思い出されます。時を現在に移して、何らか葛藤が生じるような場面で、感情的になり自制が効かず、目の前にいる方々を強い言葉で責め立てたりする場面があったとすると、その場面では、子どもの時に体験した嫌だった記憶や感情が、折りたたまれている状態からその場面で吹き出していると理解することが出来ます。子どもの時の未解決な問題は、程度の差はあれども我々の中に折りたたまれ残っているものです。正常な発達をしてきたとしても、子どもの時の未解決な葛藤は、その後の成長やその場その場の言動に影響を及ぼしています。

 さらに何らかの問題ある特性を抱えた子どもの場合は、日常の何気ない生活場面や学校場面で意味がわからないまま傷つき、それがトラウマのようになり積み重なり、ついには社会の中で自分を位置付けることが出来なくなることもあります。そうして年齢を重ねて大人となった場合、社会と半ば関わりを絶って引きこもってしまうことも起きるでしょう。何らかの精神障害を二次的に起こしてしまうこともあります。

 親から見た場合、自分の子どもが、成長の中で、集団の中で不適応を起こしたり、周囲に迷惑をかけたり、聞き分けがなかったり、周りのヒンシュクをかったりすると、親としての自分の躾が悪いと不適切な決めつけをしてしまい、世間との間に高い壁が形成されたかのように孤立感を強めてしまいます。しかも現代の許容性の限られた社会では、それを助長する風潮があるようにも感じます。時代は平成から令和になりましたが、昭和時代の日本では、子どもは地域で育つものであり、こうした家族毎の壁は低く、普通に親以外の大人が他の家の子どもに対して叱ったり、家に呼んでご飯を振舞ったりしており、親に準じた対応をしていました。つまり多くの大人が一人の子どもに関わりその子のことを考えていたと思います。育てづらい子どもも、問題行動を持っている子どもも、地域に居場所を持ち、社会の中でも多様性として受け入れられていたのではないでしょうか。適切な養育をしても、その特性ゆえに周囲に迷惑をかけるような行動が治らない子どももいます。自分の子どもが育てやすく苦労が少なかった親から見ると、こうした問題のある子どもを目にした場合、その両親がしつけを適切にしていないと眉をひそめることも多々あるでしょう。こうした社会の視線は、養育しづらい子どもをたまたま抱え、それでも奮闘している親をさらに傷つけていきます。ただでさえ、自分の育てかたが悪かった、親として適切に対処できていないと自信喪失しているお母さん、お父さんを追い詰めていきます。

 今は子どもへの躾としての体罰も法律で禁止されました。もちろん理不尽に親の都合で子どもに暴力を振るうことは、子どもの成長発達に大きな傷を残すものであり許されないことです。しかし登校・学校での学習・宿題・提出物・生活リズムの安定など社会から要請されるものを家庭の中でクリアさせようとしても、障害ゆえに家庭の中で上手くこなすことができず、家族内の軋轢に転じ、親と子どもの激しい感情的な対立として表立ってしまうことがあります。こうした状況を背景に、社会や地域や学校が、子どもの特性として通常の学校や社会への適応が難しい場合があることを理解し、社会や地域がそうした子どもに対して適切な援助をできることが求められてきました。適切な援助が提供できれば、障害を抱え傷ついている子どもと子育てに行き詰まっている親が対立するという好ましくない事態を避けることができ、今までであれば社会的に引きこもらざるを得なかった子どもたちを社会の中へと導くことを可能とするものだと思います。

 発達障害支援の法的整備、支援センターや療育制度、通信制の学校の充実、障害を抱えた子どもたちが利用できる放課後デイケアなど支援の仕組みは、かなりのところ整備が整ってきているように感じます。地域にいる支援者や理解者、学校や医療などの地域インフラのスタッフが連携し、準備されてきているものをより利用しやすく価値のあるものにしていく取り組みは、困っている家庭や障害を抱える子どもたちに大きな希望をもたらすと思います。私たちのクリニックも地域の精神福祉に携わっている以上、この子どもの発達障害の問題を地域とともに考えていきたいと思っています。

 発達障害の診断・治療の項目もご参照ください。

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